原油需要の不安定要素


原油価格低迷の長期化リスクに直面している中東などの産油国にとって、一段の価格低下は米国原油生産量を抑制するブレーキ作用になる、と見られているのは大きな救いであろう。そして世界経済の堅調さは、新興国を中心とするコンスタントな需要増への期待にも繋がる。その場合の大口顧客が中国であることは論を俟たない。だがその中国の原油輸入ペースは、戦略的備蓄の水準がほぼ上限に達してきたことから、今後は鈍化する可能性も指摘されている。(本文に続く) (編集人 倉都康行
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米国の保護貿易方針は消えず


  Bannon氏が去る一方で、Cohn NEC委員長は残留意思を表明、Kushner氏らの存在感も高まる見通しで、Trump大統領が掲げた「American First」の保護主義的方針に漸く転換点が訪れる、と期待する向きもある。だが、排外主義的な思想は政権内にまだ根強く残っており、大統領自身もその本心を隠しきれるとは思えないことから、NAFTA再交渉や貿易赤字対策などにおいて、急激な舵取りの修正が行われる可能性は乏しい、と考えるのが妥当だろう。(以下、本文に続く)編集人 倉都康行
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何故、バルセロナ?


 先週末にスペインの有名な観光地を襲った自動車突入事件は14名が死亡し100名以上が負傷する痛ましい惨劇となった。前日の爆弾暴発事件や翌未明の暴走事件など、一連の出来事がモロッコ出身者の反抗であることが判明、またフィンランドで起きた通行人襲撃もモロッコ出身者の反抗だと断定されている。スペインの事件に関してはISが犯行声明を出しているが、欧州社会を不安視させているのはむしろモロッコという地理的要件なのかもしれない。(以下、本文に続く) 編集人 倉都康行
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バノン氏は戦闘再開へ


米政権は遂に首席戦略官Bannon氏を更迭した。大統領選挙での勝利の立役者でもあり、Trump氏の保守的心情に最も近いと見做されてきた同氏の事実上の追放は、Whitehouseにおける権力闘争に一区切り付けた人事とも言える。だがそれを以ってTrump大統領がGlobalistらの言いなりになるとは限らない。Bannon氏が古巣の極右メディアに戻ることで外部からの政権運営批判が一段と強まり、Whitehouseが今後更なる動揺に見舞われる可能性を指摘する声は小さくない。(本文に続く) 編集人 倉都康行
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上下に揺れる株式市場


 米国株式市場は先週末から北朝鮮リスクで下押しされ、外交進展期待で戻したかと思いきや、今度はTrump政権の揺らぎやBarcelonaでの自動車突入事件などによって再び急落するなど、落ち着かない相場が続いている。企業決算に関しても斑色であることがあらためて認識され、強気一辺倒のムードがやや後退しているようにも見える。但し、先進国や新興国における実体経済の底堅さに著変は無く、例年の8-9月に見られる低迷パターンの踏襲に過ぎないようにも思われる。(本文に続く) 編集人 倉都康行
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2016年最後のご挨拶


  ブレクジットとトランプ氏勝利という大激震に見舞われた2016年も終幕を迎えた。市場でもマイナス金利からポンド急落そして米株最高値更新などの奔流に右往左往する展開が続いたが、それよりも欧米の人々が内向きな選択をし始めたことの方が記憶と印象に残る年であった。1989年にベルリンの壁が崩壊して以来、自由主義や市場経済の価値観が世界に定着したと思い込んでいたが、この数年間に多くの人は心の中に壁を築き始めていたのだ。  それが今年、自由主義の旗頭であった英米で表面化することになった意味は小さくない。そして来年は、その心の壁が生みだす具体的な現象が表徴化することになるのだろう。どこかの中銀総裁のように「世界が保護主義に向かうとは思えない」などと呑気な経済観を抱く気にはなれない。確かにトランプ氏が選挙中に放言していた無責任な策をそのまま採用するとは思わないが、米国の政治が変質することは100%間違いないし、欧州が泥沼のような政治的混迷から抜け出せるすれば、それは奇跡と呼んでよいだろう。  市場が政治に関する不透明性を嫌うことは周知の通りだ。筆者は政治リスクに関して言及できるほどの知識はないが、政治家の言動に関してはより深い洞察力を持つ必要があると考えている。モーゲンソーは「政策の本性はイデオロギー的偽装のヴェールに隠されている」と喝破した。それは帝国主義における背景分析であるが、覇権主義や自国優先主義などが闊歩する時代においても、予測の難しい政治リスクが市場の平穏を乱すことは日常茶飯事になるだろう。今年起きた英米での「二大事件」は、来年への単なる材料提供に過ぎないようにも思われる。 編集人 倉都康行

2015年最後のご挨拶


 年の瀬に、今年も平和裏に過ごせたことを感謝しながら、国家が少しずつ妙な方向へと姿を変えていくことに抵抗できない個人の無力も感じている。学生時代は敷かれたレールに反抗し、社会人になっても会社に文句を言い続けて結局は独立の道を選んでしまったが、幾ら好きになれなくても国家という存在から背を向けることは難しい。その重みに、個人だけでなく国債をはじめとする資本市場も潰されようとしている。  国家とは税金というオプション料を払えば権利を守ってくれるものだと思っ ていたが、現在の国家はオプション料を徴収しながら憲法を無視して権利さえ 奪い取りかねない強圧的な政府に乗っ取られてしまった。だがそんな国家像で も良いと思っている人が少なくない中での軌道修正は難しい。来年以降も抑圧 された憂鬱が続くことを覚悟せねばならないのだろうか。そして、踏みにじら れた資本市場とともに、出口のない金融政策や低成長経済を憂う日々が続くの だろうか。  いや、そんなに落ち込む必要はないかもしれない。アベノミクスは馬脚を現 し、一般の人々も安倍政権の経済政策の怪しさに気付き始めている。円安が救 世主にはなれなかったことも判明した。一人当たりGDPで日本が順位を大きく下 げたのも、行き過ぎた円安の所為だということは自明だろう。円の水準にもう 少しプライドを持ちたいものである。株価が多少もたついても、民間企業が独 自の成長戦略で稼ぐ力を取り戻せば良いのである。経済の基本は個人と企業で あり政府ではない。来年は、アベノミクスと日銀追加緩和という二つの単語を 捨てることで、過去3年間の清算を図りたいものである。 編集人 倉都康行

2014年最後のご挨拶


 2014年もあっという間に過ぎ去ろうとしている。日本はアベノミクス失敗を暗示する景気後退入りとなったが、安倍政権の巧みな選挙戦術で経済問題は封じ込められ、逆に「アベノミクス信認」という強引なキャッチフレーズで国民を幻惑させてしまった。その後永田町から出てきたのは自民党の得意とするばら撒き作戦と大企業優遇策であり、財政再建や規制緩和、安定成長への見取り図など長期的な針路は全く示されないままの越年である。情けない国になり下 がった印象は否めない。  公的債務増と人口減という破滅的な構造や、既得利益の温存と格差拡大という衰退的長期トレンドを無視した政権運営に「NO」を突き付ける機会は当分到来しそうにない。安倍政権は長期戦略を描く時間を手に入れたにもかかわらずその根源的は保守思想からすれば、大胆な構造改革に斬り込むことはまず期待出来そうにない。来年は増収を背に受けて統一選に向けたばら撒きを再開し、 市場懸念を訴えた財務省への嫌悪感を顕にしつつ、日銀には更なる円安・株高実現の為の政策を強要する姿勢を堅持することになるだろう。  その日銀が作り上げたマイナス金利世界は、来年10年債など長期債市場にも波及しそうな気配である。そんな異変の定着は、秘密保護法や集団的自衛権そして原発再稼働などに対する疑念をも希薄化させる、いわば「誰もが異変を異常と思わなくなる時代」の到来を告げるものだ。安倍政権は、それを感知させない「麻薬」を最大限に利用している。円安や株高は、日本人を思考停止に追いやる為の優れたクスリなのだ。その事実を忘れずに、市場は市場と割り切りながらもそこに隠された政治的意図を看過することのないよう、来年も頭だけは冷静さを保ち続けていたいものである。 編集人 倉都康行

2013年最後のご挨拶


 アベノミクスに舞い、テーパリングに揺らいだ1年も、景気回復への期待感とともに幕を閉じようとしている。今年は円安・株高に乗った人々が勝ち組と なり、アベノミクス批判者は負け組となった。日銀の政策への違和感を抱き続 ける筆者も後者の一人である。だが市場が常に真実を照らす鏡であるとは言え ない。日本だけではないが、過去5年間に蓄積された金融政策の評価を2013年 だけで下すには、あまりに性急過ぎる。その軽薄なムードは米国でも顕著にな りつつある。新興国を別とすれば、2014年が明るい年になるとの期待が高まっているのは 事実だ。その筆頭を行く米国では様々な数字で改善が見える。先週公表された 同国商業用原油備蓄の減少も、シェール革命による増産を上回る需要が生まれ ていることを示すものだ。ガソリン消費も増えている。年末年始の米株式市場 が更に勢いを増すことも考えられよう。「市場先走り」のムードが高まれば新 年の日本への順風も強まりそうだが、そこに落とし穴が無いとは言えない。金融政策に市場経済の期待値を引き上げる効果があるのは、現代では誰もが知っている。資本市場はその通りに動いている。そして金融政策が過剰期待を生むことも現代常識の一つだが、それを見極める力を備えていないのが人間社会の特徴である。現在のリスク資産指向の転換点が2014年に到来するのか、或 いは2015年以降になるのか解らないが、予測不能だといって点検を怠る訳には いかないのが、市場ビジネスに携わる人間の宿命でもある。経済は常に人々の 想像を超えた動きを生んできた。リスク要因が減少しているからといって、そ れに並行して観察力や判断力まで低下させてはなるまい。 編集人 倉都康行